暖ったかいんだからぁvv
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。

  


毎年毎年、この冬は暖冬でと言われつつ、
最後の方で帳尻合わせみたいな豪雪が
必ずやって来るのがこのところの日本の冬で。
でもでも、そういえば、
何年かに一度は
札幌の雪まつりとかスキー場が雪不足で困ってると
ニュースで取り上げてなかったか。

 「酷暑だったって印象しかないのに、
  数字だけ見返すと実は冷夏だったらしい
  先の夏みたいなもんですかね。」

 「???」

 「ヘイさん、ややこしくて久蔵殿がついてけてない。」

年が明け、三学期も始まっていて、
まだまだ夜明けが遅いせいか、朝の登校時は結構な冷え込みようだが、
そうはいっても そういえば、
まださほど本格的にもこもこ着込むという段階じゃないような。
午前の授業では手や指先が冷たいなぁと感じることもないではないけど、

 「帰るときにうっかりマフラー忘れかけて、
  教室や部室へ戻ってくる人が多いですものね。」

 「そうそう。」

相槌を打ちかかり、だが、

 「何でヘイさんがそれ知ってるの?」

教室へ戻ってくる人というのならともかく、
部室へというのは…美術部の幽霊部員という
巨乳だけどもあんまり胸を張れない肩書持ちのひなげしさんには (余計なお世話です)
気づきようがないのではと。
そんな彼女が一応の籍を置く美術室の窓辺の陽だまりで
持ち寄ったお弁当広げて
仲良し3人でお昼のひと時を過ごして居た白百合さんが
あれれェと小首を傾げて問いただせば、

 「何言ってますよ。
  私がこの学園内にどれほど監視カメラを設置していると思いますか?」

エッヘンと、それこそ胸を張る電脳小町さんだったものだから。
ちょっと苦手なシイタケの含め煮を“食べて”と七郎次に差し出しかけてた久蔵が、
うんうんと“まったくだ調”にて深々頷いたものの、

 「二人とも、そこは威張っちゃいけないところだってば。」

ああ、これへツッコミ入れられる常識人でよかったなぁと、
妙な順番でホッとしつつも
苦笑をこぼした白百合さんだったのは言うまでもなかったり。
要するに、今や学園内のどこにも死角なんてないぞ状態で
人感知センサー式の監視カメラを設置済みな平八であるらしく。
そうしたところ、無人なはずの下校後の部室や何やから、
人影感知しました通知が専用の端末へ続々届く今日この頃だとか。

 「見覚えのあるお人が慌てて駆け戻って来て、
  ロッカーからマフラー引っ張り出してるのを、もう何回見たことやら。」

 「…ヘイさん、それって覗きとどう違うの?」

  私のはあくまでも
  窃盗騒ぎが起きないようにという防犯のための設置ですよ。

  そうと言いつつ、今、微笑ましいなぁって顔になってたぞ?

  ……。(頷、頷)

彼女の思惑がちゃんと判っていればこそのちょっかい掛けなのへ、
もうもう、シチさんたらと、
平八の側でも甘え半分に言ったなぁと突っかかる真似をする。
キャッキャとはしゃぐご様子は、
一見すると無邪気な女子高生のじゃれつきあいでしかないのだけれど、

 「それとは別に、
  公会堂前の通りへも設置してたカメラが、
  ちょっと気になる輩の動きを拾ってましてね。」

食後のおやつにと、
五郎兵衛のお手製の栗入り三笠を持って来ていた平八が
小ぶりの風呂敷包みを広げつつ、
その結び目へ手古摺るふりをし、小声でささやいたのへ、

 「おや。」
 「…。」

あとの二人が、玻璃玉みたいな目許をきらりんと鋭く研ぎ澄ます。

 ほら、来週は成人の日でしょう?
 そうそう、あすこでも成人式の予定がありましたよね。
 ウチを卒業した顔ぶれも。

ここいらはお屋敷町なので、
地元からの徒歩通学という在校生も少なくはなく。
となれば、卒業生にだって地元のお人は少なくはなく、

 「御影の坂の佐和子さまとか、久蔵殿も仲良くしていらしたものねぇ。」

白百合さんからそう振られ、

 「…?   …っ、」

一瞬キョトンとしてから、うんうんと頷くところなぞ、

 「名前で把握してなかったな、あれは。」
 「みたいですね。」

平八と七郎次が苦笑しつつ意を合わせ、
ほっこり笑って懐かしいというお顔をする紅ばらさんへ
あらためて問いかけてみる。

 「佐和子さまのこと、どう覚えておいでなのですか?
  ……ピアノを練習するお仲間だったの?
  時々、ドロップやクッキーを下さった?
  そっかぁ、確か新体操部や演劇部のBGMとか演奏してくださってた、
  それはやさしいお姉様でしたものねぇ。」

そんなお姉さまが成人式にと運ばれる会場ならば、
どんな妨害行為も許すわけにはまいりませんよね。
ええ、勿論ですとも、と。
相変わらずに物騒な作戦会議が始まりそうな女学園の一角で。
佐伯さん、勘兵衛様、榊せんせえでもいいから、
誰か気づいて何か言ってやって、言ってやってよ、ねえ。(苦笑)





   〜Fine〜  16.01.11


 *タイトルに偽りありってでしょうか。(う〜ん)
  こちらの新年一発目は、
  やっぱりきな臭い話になっちゃったお嬢さんたちです。
  今年も先が思いやられそうですよ、保護者の方々。(笑)

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